ウズベキスタンで大学を運営している日本企業
ウズベキスタンで大学を運営している日本企業
日本の質の高い教育を世界へ届けたい
1.略歴
氏名: はが弘明(Haga Hiroaki)
工学院大学電子工学科を卒業後、富士電機株式会社に入社、富士通との合弁会社で基本ソフトウェアの開発に従事。1995年12月に株式会社デジタル・ナレッジを創業し、代表取締役社長に就任。2020年にはウズベキスタン・タシケントにて「Japan Digital University(JDU)」を設立。
2.貴社のウズベキスタン事業について教えてください。
私たちは「Japan Digital University(JDU)」という大学を設立・運営しています。キャンパスはタシケントにあり、学生たちはキャンパスに通いながら、デジタルテクノロジーを活用して日本の提携大学の授業を受講します。JDUは、学生が両国の学士号を取得し、その後日本での就職を目指すための教育を提供する大学です。
3.ウズベキスタン事業に携わることになったきっかけを教えてください。
私は日本で「デジタル・ナレッジ」というeラーニングテクノロジーの会社を経営しており、JDUはその100%子会社として設立されました。デジタル・ナレッジは、日本国内で約3,000社のお客様にeラーニングサービスを提供しています。
ウズベキスタン事業に関わるきっかけとなったのは、数年前に参加した国際協力機構(JICA)のプロジェクトです。このプロジェクトは、発展途上国の教育水準を向上させることを目的としており、私はウズベキスタン全国の小中学校(Maktab)の先生方の教育レベルをeラーニングで向上させる活動に携わりました。このプロジェクトでは、都市部と地方の先生方に同じ教育を提供することで、教育格差を解消することを目指しました。
プロジェクト終了後、私はウズベキスタンでJICAさまと在ウズベキスタン日本大使館を訪問しました。その際、ウズベキスタンでは高等教育が不足しており、教育機関の数や質を向上させたいという政府の要望をお聞きし、その場で構想をディスカッションしました。ですのでJDUはJICAさまと大使館さまのお陰で生まれたプロジェクトであると思っています。この背景を受け、国内で提供していたeラーニングサービスを海外展開できると考え、JDUの構想を練り、設立に至りました。
さらに、日本国内市場の縮小やウズベキスタンの若年層の増加も事業推進を後押ししました。また、当時ウズベキスタン大統領の訪日というタイミングも重なり、事業はより前向きに進められるようになりました。
4.ウズベキスタン事業立ち上げに関して苦労された/苦労していることについて教えてください。
当社は日本国内で30年以上eラーニングサービスを提供してきましたが、今回が初めての海外進出であり、大学設立も初めての挑戦でした。そのため、「苦労」というよりは、何も分からない状態からのスタートだったと言えます。
手探りの中、JETROやJICA、大使館、日本の法律事務所である瓜生・糸賀のヤラシェフ先生をはじめ、多くの方々に助けていただきました。特に大学設立に伴うライセンス取得は大きなハードルでしたが、皆さまのサポートのおかげで、2019年5月に初めてウズベキスタンを訪問してから、約1年で大学を設立することができました。
また、もう一つの課題は「本当に学生が集まるのか」という点でした。ウズベキスタンは若年層が多く、大学の数も日本の約800校に対して当時50校程度と少なかったため、市場の可能性はあると考えていました。しかし、日本の教育を受けたいというニーズがどれほどあるのか、確信を持てませんでした。
そこで、ウズベキスタンの若者が活発に利用しているSNS(Telegram、Instagram、Facebook)を活用し、アンケート調査やニーズ分析を実施しました。また、現地でのセミナー開催を通じて学生たちの関心を確認しました。その結果、多くの学生が日本の教育に興味を持ち、セミナーには予想以上の参加者が集まりました。この経験が自信につながり、安心して大学を設立することができました。
5.貴社従業員含め、ウズベキスタン人材の特徴、強み、弱みについてどう思われますか?
ウズベキスタン人材を育成し、日本での就職を目指してもらうことを目的としているため、この点を非常に重要視しています。
強み:
ウズベキスタンの人材は非常に誠実であり、この点が日本人と近い特性です。この誠実さは、日本で働く上での基礎となり、日本企業からも高く評価される要素です。
弱み:
一方で、足りない点として以下が挙げられます:
質問力
論理的思考力
期限と約束を守る意識
学生には特に「質問力」が不足しているため、教育においてこの力を向上させることを重視しています。日本では、何かを説明された際にただ理解するだけでなく、それに対して質問し、共感をもってコミュニケーションを図ることが求められます。質問する力は、日本企業でのコミュニケーションや面接を通過する上で非常に重要なスキルです。
日本語能力の重要性:
また、日本企業は採用後の社員を育成する意識が強いですが、日本語能力があることが採用や職場での成功に直結します。そのため、日本語能力の向上も必須と考えています。
6.Why ウズベキスタンと聞かれたらどう答えますか?
ウズベキスタンは出生率が高く、人口増加に伴う発展の熱気を肌で感じる国です。国全体が成長を目指している姿勢が非常に印象的で、これからの可能性を強く感じさせます。
さらに、ウズベキスタンの人々は非常に誠実であり、この誠実さがビジネスを進める上での大きな安心感を与えてくれます。多くの選択肢がある中で、ウズベキスタンは事業展開先として最良の選択肢の一つだと考えています。
7.ウズベキスタン人材の日本就労が促進されるためにどうすれば良いと思いますか?
JDUでは今年初めての卒業生を輩出しましたが、全員が内定を獲得しており、大変嬉しく思っています。この結果からも、ウズベキスタン人材の誠実さが日本企業で高く評価されていることがわかります。
日本での就労をさらに促進するためには、まず日本語能力が非常に重要です。日本企業では採用後に社員を育成する文化がありますが、業務やコミュニケーションの基盤として日本語力が求められます。これを高めることで、より多くの人材が採用される可能性が広がるのではないかと思います。
また、ウズベキスタン側でも、日本で働くことの魅力やメリットを伝えるプロモーション活動を行う必要があります。日本でのキャリア形成の可能性や具体的な成功事例を共有することで、若者たちが興味を持ち、日本就労を目指すきっかけを提供できると考えます。
8.ウズベキスタン進出を考えている日本企業向けにメッセージをお願いします。
JDUは5年前に拠点を設置しました。5年間の努力の結果、今年初めて卒業生を迎え、全員が内定を獲得しました。今振り返ってみても、「やって良かった」「やらなければいけなかった」と強く感じています。
日本の質の高い教育を世界に届けるニーズがあり日本の主要輸出品目にしていきたいと考えていますが、それにとどまらず、日本の質の高い製品やサービスをお持ちの日本企業の皆様にも、ぜひウズベキスタンへの進出をご検討いただきたいと思います。
ウズベキスタンの良いところは、若者が多い三角形型の人口ピラミッドと経済成長の著しさです。その熱気を実感できる国であり、非常に日本とコントラストがあるため、日本企業がウズベキスタンに進出するメリットは大きいと確信しています。
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