労災保険(ろうさいほけん)の種類(しゅるい)と保険金(ほけんきん)を支払(しはら)ってもらう方法(ほうほう)
労災保険(ろうさいほけん)の種類(しゅるい)と保険金(ほけんきん)を支払(しはら)ってもらう方法(ほうほう)
日本(にほん)の労災保険(ろうさいほけん)(正式名称(せいしきめいしょう):労働者(ろうどうしゃ)災害補償保険(さいがいほしょうほけん))とは、
労働者が仕事や通勤が原因でけがをしたり病気になったりしたときに、治療費(病院でかかるお金)などを保険で支払ってもらう制度です。労働者を雇う事業者(会社など)は労災保険に入る義務があります。労災保険の種類や対象者(労災保険からお金をもらえる人)、支払ってもらう方法など、労働者が知っておくべき労災保険の基礎知識を紹介します。
労災保険(ろうさいほけん)とは
日本で働いている外国人も労災保険を使え、保険から治療費などを受けとることができます。
仕事や通勤が原因でけがや病気が発生することを「労働災害」と呼びます。そして、労働災害のけがや病気の治療に対して労災保険から給付金などが支払われることを「補償」といいます。労災保険には、けがや病気の治療費・入院費や、けがや病気のために仕事を休んで給料が減ったときの補償、障害が残ってしまったときの補償など、さまざまな補償があります。
ところで、「給付」とはお金が支払われることです。保険からお金が支払われることを「保険給付」と言います。また、そのときに支払われるお金のことを「給付金」と言います。給付金のなかには、1回だけのものと必要な時期まで毎年支払われるものがあります。毎年支払われる給付金のことを「年金」と言います。年金が支払われることを「年金給付」と呼ぶときもあります。
◆労災保険(ろうさいほけん)と健康保険(けんこうほけん)の違(ちが)い
公的な医療保険(健康保険、国民健康保険)もけがや病気による治療費を補償してくれます。労災保険と健康保険との違いは次のとおりです。
労災保険 | 仕事や通勤が原因で起きたけがや病気の治療費などを補償 |
健康保険、国民健康保険 | 仕事や通勤と無関係のけがや病気の治療費を補償 |
労災保険(ろうさいほけん)の対象者(たいしょうしゃ):だれが労災保険(ろうさいほけん)を使(つか)うことができるのか?
労災保険は法律で決められた制度で、労働者を1人でも雇っている事業者(会社など)は労災保険に入らなければなりません。保険料はすべて事業者が支払います。
基本的に、労働契約を結んでおり、事業者から指揮命令(上下関係にもとづく指示や命令)を受けるなどしている人(労働者)は労災保険の対象です。パート、アルバイト、契約社員、派遣社員、日雇いなど、すべての労働者が労災保険の対象です。派遣社員の場合は、派遣元(あなたを別の会社に送り出している会社)の事業者が労災保険に入ります。
請負契約などの業務委託契約で働いていても、実質的には労働基準法上の「労働者」と判断される場合は、労災保険を使うことができます。
通常、企業の代表者や役員、自分で事業を行う人などは「労働者」に当たらないので、労災保険の対象ではありません。ただし、申請手続きによって労災保険に入ることもできます。特別加入制度といいます。
労災保険(ろうさいほけん)給付(きゅうふ)の種類(しゅるい)と給付額(きゅうふがく)
◆労災保険(ろうさいほけん)給付(きゅうふ)の種類(しゅるい)
労災保険の給付には下の表の7種類あります。また、これらのほかに二次健康診断等給付などもあります。
療養(補償)等給付 | 業務(仕事)や通勤が原因で起きたけがや病気の治療に対する給付 |
休業(補償)等給付 | 業務や通勤が原因で起きたけがや病気のために働くことができなくなり、給料をもらえない場合の給付。 休み始めて4日目の分からお金がもらえます。もらえる金額は原則として1日の平均賃金にあたる金額(給付基礎日額)の60%です。 休み始めて3日目までの補償は事業主(会社など)が行います。 |
傷病(補償)等年金 | 業務や通勤が原因で起きたけがや病気が1年6カ月たっても治らず(症状が固定せず)、一定以上の障害があるときに、②から切り替えて支給される年金 |
障害(補償)等給付 | 業務や通勤が原因で起きたけがや病気の症状が固定し、一定程度以上の身体障害が残った場合の給付(年金を含む) |
遺族(補償)等給付 | 労働災害によって死亡した場合、一定の範囲の遺族に支払われる年金や一時金 |
葬祭料等(葬祭給付) | 労働災害で死亡した場合、葬儀を行った人に葬儀費用の一部を給付 |
介護(補償)等給付 | 障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者のうち、特に障害の程度が重い障害を持ち 、今、介護を受けているときの給付 |
◆全額(ぜんがく)が補償(ほしょう)されるわけではありません
労災保険の給付額は、治療日数や賃金額などに応じて計算されます。労災保険では一部の費用(入院中に買ったパジャマなどの入院雑費など)が支払われません。また、労災保険には「慰謝料」も含まれていません。労災保険で支払われない部分や慰謝料については、会社と交渉し、場合によっては損害賠償請求の裁判などを行う必要があります。ただし、会社側に安全配慮義務違反などがあった場合に限って、会社に支払義務があります。支払いを求めた金額がすべて認められるわけではありません。
業務災害(ぎょうむさいがい)と通勤災害(つうきんさいがい):「仕事(しごと)が原因(げんいん)のけが・病気(びょうき)」と「通勤(つうきん)が原因(げんいん)のけが・病気(びょうき)」
労災保険給付の対象となる労働災害は、業務に起因する「業務災害」と通勤時に起こる「通勤災害」の2つに分かれます。
◆業務災害(ぎょうむさいがい)
業務災害と認められるためには、業務遂行性と業務起因性の両方の条件を満たさなければなりません。
業務遂行性 | 労働者が労働契約により、会社などの支配下にあること。 |
業務起因性 | 会社などの支配下にあることに伴い危険が現実になったと考えられること。 |
【業務災害(ぎょうむさいがい)の例(れい)】
- 業務中のけが
- 業務を一時的に中断しているときのけが(トイレなど)
- 業務の準備中または後片付け中のけが
- 出張中のけが
上の例だけではなく、精神障害や脳・心臓疾患についても労災にあたることがあります。労災かもしれないと思ったら、労働基準監督署(労基署)などに相談してみましょう。
◆通勤災害(つうきんさいがい)
通勤災害とは、通勤が原因で起きたけがや病気などのことです。通勤災害が労災認定されるためには、次の①~④の条件が必要です。
① 移動の内容
- 住居と仕事の場所との間の往復
- 仕事の場所から他の仕事の場所への移動
- 単身赴任先(仕事のために家族と離れて住んでいる場所)の住居と帰省先住居(家族が住んでいる家)の間の往復
通常の移動ルートから外れたとき、または、移動を一度やめてその後に移動するときは、「通勤」に含まれません。例えば、仕事の場所から家に帰るまでに長い時間お酒を飲んだ場合、お酒を飲んだ後の行為は「通勤」にあたりません。ただし、いつもの生活に必要な物を買うことや病院へいくことなど日常生活上必要な行為である場合は、通常のルートから外れたり、移動を一度やめたりしても、そのあとの行為は「通勤」にあたります。
② 「就業」(仕事をすること)に関連していること
「住居と仕事の場所との間の往復」又は「仕事の場所から他の仕事の場所への移動」の場合、けがや病気になった日に仕事をする予定だったか、実際に仕事をしていたことが必要です。
「単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動」の場合には、就業日の前の日・当日・次の日の移動であることが必要です。
③ 「合理的な経路」・「方法」による移動であること
通常、労働者が使うと認められるルート(経路)や方法をいいます。遠回りや寄り道をした場合、合理的な理由がない限り、「通勤」には含まれません。
④ 移動が業務ではないこと
業務による移動は「業務災害」となります。会社が社員のためだけにバスを準備して、そのバスで会社に行くときに事故にあった場合などです。
労災保険(ろうさいほけん)給付(きゅうふ)の申請(しんせい)方法(ほうほう)
労災保険の給付を受けるためには、労基署への申請(請求)が必要です。一般的に、労働者本人や家族の代わりに、会社などが申請書(請求書)を作って、労基署へ出します。会社などが手続きをしてくれない場合には、労働者本人や家族がすることもできます。
仕事中や通勤中にけがをした場合や、仕事がもとで病気になったと思われる場合は、まず会社に報告し、労災申請についても相談してください。
療養(補償)給付以外の労災保険給付を申請する場合、労基署に申請書を提出する必要があります。申請書のフォーマットは厚生労働省のホームページにまとめられています。わからないことは労基署の窓口に相談しましょう。
それでは、一般的な労災申請の手順を紹介します。
- 会社に労働災害について報告・相談します。
- 労災保険給付の申請書を作り、必要な書類とともに会社の近くの労基署に提出します。
- 労災事故の調査:労基署が労災事故について調査を行います。
- 支給決定、保険給付:労働災害と認められると、口座にお金が振り込まれます。
労災申請の結果が出る前に病院に行くときは、労災事故であることを病院で言ってください。その病院が「労災保険指定医療機関」なら、療養(補償)給付として、自己負担なしでお医者さんにみてもらえます。病院に行った後で労災申請が認められなかったときは、健康保険などで支払ったことになります。そのため、健康保険などの自己負担分を後で支払います。
「労災保険指定医療機関」以外の病院へ行った場合は、労働者が医療費を立て替えて支払い、労災が認められると、立て替えた医療費が戻ってきます。
労災保険指定医療機関検索|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
労災申請には、給付内容によって2年または5年の時効(期限)がありますので、早めに申請してください。申請の詳しい内容については、厚生労働省のパンフレットを読んでください。
参照元:JP-MIRAIポータル (https://portal.jp-mirai.org/ja/work/s/work-in-japan/rosai)
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