ウズベキスタンの教育
ウズベキスタンの教育
ウズベキスタンの教育
ウズベキスタンでは、国連の定義で子供及び若者とされる 24歳以下の占める人口は、総人口の約37%を占めています。また、平均年齢(中位年齢)は約27歳であり、日本の各指標と比較すると 若年層が多い人口構成となっています。
また、ユニセフ(2018)によれば、生産年齢人口の割合が高くなる人口ボーナス期と呼ばれる時期が暫くは継続し、国の繁栄と貧困・不平等を削減するための高い経済成長を享有できる時期にあるとしています。従って、国の発展の基盤として、若年層の教育が重要となっています。
ウズベキスタン政府の方針として、ミルジヨーエフ大統領就任一期目の2017年~2021年に国の開発戦略が策定されました。この開発戦略での社会開発分野の優先分野として、「教育と科学の発展」が掲げられ、教育・訓練分野での重点施策が示されました。そこでは、就学前教育の拡充、初等中等教育での外国語教育、IT・数学・理科教育等の向上、専門・職業教育分野での市場経済や雇用者ニーズに応じた教育の提供、高等教育分野での国際的教育基準の導入や教育評価を通じた質の改善及び研究力強化等、今日の施策に繋がる施策方針が示されました。
現在、新ウズベキスタン開発戦略(2022-2026)及び2030年までの公教育及び高等教育の発展計画等の政府方針に基づき、就学前教育から高等教育まで、就学者数が増え続ける中、教育の各段階のおける量的拡大と質の確保・向上の両立に向けた施策が展開されています。
以下において、ウズベキスタンの教育制度を概観します。
教育制度
就学前教育[幼稚園 3-7歳]、初等教育[4年 7-11 歳]、基礎中等教育[5年 11-16歳 ]
中等教育[2年 16-18歳]、高等教育[学部 3年以上 18歳~、大学院(修士・博士)]
義務教育:初等~中等教育までの11年
学事歴:9月~翌年5月
初等教育、基礎中等教育及び中等教育を合わせて普通中等教育と定められています。高等教育は、大学(University又はInstitute)の他にアカデミーで行われています。
教育法:1997年制定の教育法は、2020年に改正され4-5-2の11年間の義務教育としての普通中等教育制度が法律上で明記されました。また、この法律では、インクルーシブ教育が明示された他、教育機関の内部・外部評価、官民連携(Private-Public Partnership)の手段による非国有機関の設置が定められています。
就学前教育
就学前教育(幼稚園)の就学者数増加が顕著で、2022年には約146万人の子供が就学し、2012年の約3倍となっています。政府としては、就学率を2030年には80%までに高めることを目標としています(2022年の就学率は68.3%)。なお、初等学校への進学前の1年間は(6-7歳)、初等学校への義務的な準備段階として位置づけられています。
普通中等教育(初等教育・基礎中等教育・中等教育)
普通中等教育(第1学年~第11学年)段階では、約665万(2022/2023) の児童・生徒が就学し、学校数共に年々増加しています。非国有の学校で学ぶ児童・生徒は約6.3万人程度で、全体に占める割合では少ないですが、2019/2020年からは3倍に増加しています。中等専門教育学校として、アカデミックリツェイが設置されており、主に大学進学を目指す生徒が学んでいます。2022/2023年に85校(その内、27校がタシケント市内の学校)で、同学年の生徒の約10%が就学しています。
専門教育(Professional Education)
初等専門教育(第10-11学年、2年間)、中等専門教育(カレッジ、05~2年間)、中等特別専門教育(テフ二クム、2年間以上)で行われています。
ウズベキスタンでは、2017/2018年に制度改革が行われ、第9学年後終了後に進学する学校であったカレッジは、第11学年終了後に進学する教育機関となりました。また、テフ二クムは、高等教育機関の監督下で専門教育を実施する教育機関として、第11学年終了後に専門教育を行う学校として設置されることとなりました。カレッジでは、教育、観光、工業・鉱業等の分野、テフ二クムでは、医療、農業、産業技術、情報技術、輸送、建設等の分野で教育が行われています。
高等教育
高等教育(大学)段階では、学生数及び大学数が大きく伸びています。2023/2024年の大学数は219校で、学生数は約131万人、その内、約37%がタシケント市内の大学に在籍しています。2013年との比較で学生数は約4倍、学校数は約3.6倍に増加しています。非国有大学・外国大学分校の設置も増加しており、42校及び26校が設置されています(2022年)。世界銀行によれば、2012年に約8%だった高等教育レベルの就学率は、2023年では約41%となっています。
学生の専攻分野は、48%が人文科学、10%が社会科学、25%が生産・技術(工学系)、7%が医療系に在籍しており、今後、工学・技術系専攻を全体の50%まで増やすことを目標とされています。
ウズベキスタンの大学と日本の大学及び企業連携
ウズベキスタンの大学と日本との大学(国立大学18校、公立大学4校、私立大学20校)との間では、大学間交流協定が締結され、学生・教員・事務職員交流、共同教育プログラム等が実施されています。ウズベキスタンには、名古屋大学、筑波大学、東京外国語大学が拠点を設置しています。
2016年にタシケント工科大学内に設置されたウズベキスタン-⽇本⻘年技術⾰新センター(UJICY)は、両国の大学研究者間での協力の促進と共に、ウズベキスタンでのビジネスを検討する日本企業とウズベキスタンの大学・研究者、企業との連携構築のための支援活動を行っています。
大学等の紹介
ウズベキスタンでは、日本語教育専攻を設置している大学、日本の企業と連携を通じた学生のインターンシップ派遣、学生の日本での就職実績を有する大学がいくつかあります。また、日本語教育日本での就労に関心を持つ大学が増えつつあります。以下にその一部を紹介します。
タシケント国立東洋学大学
1918年創立。東洋学分野の教育研究を行う7学部27学科を設置し、14の外国語教育を提供しています。1992 年に中央アジアで初めて日本語学科を設立し(2019年に日本学部として改組)、他の国立大学の日本語教育のカリキュラムは、東洋学大学のカリキュラムに準拠することとなっていること等、ウズベキスタンにおける日本語教育の中核機関となっています。
現在、日本語学部、翻訳学部、観光学部等で約600名の学生が日本語を学んでおり、修士入学時にはCEFR (ヨーロッパ言語共通参照枠)の C1レベル(JLPT: 日本語能力試験N1)の日本語能力を目指しています。学生の海外派遣として、同大学と日本の団体が連携し、当大学での事前研修を実施し、日本の企業に学生をインターンシップで派遣する取組み等を行っています。なお、東洋学大学には筑波大学及び東京外国語大学の拠点が設置されています。東洋大学附属リツェイでは、第10-11学年(日本の高校生段階)で第一外国語として、日本語教育が行われています。リツェイの卒業生の多くは東洋学大学を始めとする大学に進学しています。https://tsuos.uz/en/
ウズベキスタン国立世界言語大学
1940年に創立。9つの学部で日本語を含む20の外国語教育を提供しています。2014年に日本語専攻を設置し、日本語専攻以外の学生を含めて約600名が日本語を学んでいます。日本語専攻の学生は、修士入学時にCEFR C1レベル(JLPT N1) の日本語能力を目指しています。日本の自治体と連携した学生の日本への派遣も行われています。https://www.uzswlu.uz/en
サマルカンド国立外国語大学
1994年創立。日本語を含む8学部で外国語教育を提供しています。日本語専攻以外の専攻の学生を含め約500人が日本語を学んでおり、修士入学時にCEFR C1レベル(JLPT N1) の日本語能力を目標としています。日本への学生派遣は、日本との大学の間での交換留学が主体となっています。https://samdchti.uz/site/page/85
IT分野
Japan Digital University (JDU)
2020年に設置の非国有(Non-state)大学で、学生数は約600人です。同大学は日系で初めて設置されたIT系大学で、日本企業の支援を受けて設立されました。学生は日本企業での就職を目指して入学します。修学期間は4年半で、ITエンジニアスキルだけでなく、日本語や日本の就業文化を学び、日本企業でのインターンシップも用意されています。日本の複数の大学との連携により、日本の大学の授業を受講し、日本とウズベキスタンの両方の学位取得が可能となっています。日本語教育については、学生は卒業前までには日本語能力試験(JLPT) N2を目指します。
また、Co-workという必須科目を開講し、日本の企業からオフショア委託を受けて、CADデザイン、動画作成、アプリ開発等の実践的な業務を教育に取り入れる等、学生の実践的な能力育成に力を入れています。学生の就業を担当する部署を置いていること等、学生の就職支援に力を入れている大学です。観光学部も設置されています。https://jdu.uz/
観光分野
シルクロード国際観光・文化遺産大学
2018年にウズベキスタン初の国際的な国立大学として設置されました。観光産業で国際的に活躍する人材育成を目的とし、観光マネージメント学部の下に観光マネージメント学科、歴史文化遺産学科及び言語学科が組織されています。学生数は約3,000人で、授業は英語で行われています。日本の企業と連携した学生交流が行われています。https://www.univ-silkroad.uz/en/
農業分野
タシケント国立農業大学
1930年設置。10学部を有し、学生数は約17,500人。果樹・野菜栽培、森林・園芸、畜産・養殖、貯蔵・加工技術等、農学分野で幅広く教育研究を行っている農学系総合大学です。欧州の人材派遣会社や大学と連携し、学部学生約100名を約半年間、ドイツ、ポーランド、英国等にインターンシップ(6か月派遣)派遣する等、学生の海外派遣が活発です。https://tdau.uz/site/menu?s=universitet-tarixi
サマルカンド農業イノベーション研究大学
タシケント国立農業大学のサマルカンド校から独立して、2023年に設置。学生数は約1,600名で、農業及び食農業生物学学部及び経済・マネージメン学部の2学部で組織されています。多くの学部学生が1月程度、ドイツ、英国等にインターシップを経験しています。https://samaguni.uz/
その他分野
アングレン大学
タシケント州アングレンに2022年に設置された非国有の新設大学。医、経・法、教育・言語等の学部が設置されており、学生数は約5,500人で、地域の高等教育を担っています。日本語学科の設置が予定されており、日本企業と連携した学生の日本への短期派遣の実績もあります。https://en-
上記以外に、JICAボランティアによる日本語教育支援、観光教育支援が行われている大学として、タシケント国立経済大学、世界経済外交大学、ウズベキスタン世界言語大学、サマルカンド経済サービス大学があります。また、IT分野では、International Digital University、観光分野のカレッジとしてタシケント観光・ビジネスカレッジ、サマルカンド観光・文化遺産テフニクム等があります。
参考資料・文献
UN Statistics Division:https://data.un.org/Data.aspx?d=POP&f=tableCode%3A22
United Nations Department Economic and Social Affairs Population Division: https://population.un.org/dataportal/home?df=366cc9cd-d593-4450-82c6-eba23d6214c8
UNICEF Uzbekistan(2018): Uzbekistan :“Generation 2030 Uzbekistan”
UNICEF Uzbekistan (2021): “Education Sector Analysis: 2021”
UNICEF Uzbekistan (2017): “Uzbekistan’s Law on Education (1997) Review and Suggestion for Revision"
The Government of Uzbekistan: Education Sector Plan (ESP) of Uzbekistan
World Bank Data https://databank.worldbank.org/source/world-development-indicators
Asian Development Bank (2022): “Skills Development in Uzbekistan A Sector Assessment”
ウズベキスタン共和国法令 Decree of President of the Republic of Uzbekistan PF-4947 (2017): About the action strategy for the further development of the Republic of Uzbekistan
ウズベキスタン共和国法令 Law of the Republic of Uzbekistan ORQ-637 (2020) : "About Education” https://lex.uz/ru/docs/5013007
ウズベキスタン政府各種統計:Statistic Agency under the President of the Republic of Uzbekistan.
文部科学省: 世界の学校体系
文部科学省: 海外の大学との大学間交流協定、海外における拠点に関する調査結果
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