送出手続の概要
送出手続の概要

1. ウズベキスタンの移民労働制度の変遷
移民労働者の送出制度の変遷は、以下の表のとおりである。
1995年以降、ウズベキスタンでは国外就労をするためには国家機関による就労許可が必要とされた。また、民間による移民送出しは認められていなかったが、2018年から民間送出機関による移民送出しが認められるようになった。2019年に日ウ間で技能実習・特定技能の覚書が締結されたこともあり、日本への送出も少しずつ増えている(2023年12月時点で305名)。移民労働制度の変遷の概要については、以下の表のとおりである。
年 | 法令 | 概要 |
1993年 | 内閣令№353 「労働力の輸出入の規制手順に関する規則」および「労働活動のライセンス手順に関する規則」 | ①労働省から許認可を得た法人による移民送出が認められた。 ②個人が外国企業と直接労働契約を締結する場合は、労働省から国外就労許可を取得する必要があった。 |
1995年 | 内閣令№ 408 「ウズベキスタン共和国国民の国外における労働活動の手順に関する規則」 | 上記①が廃止され、全ての移民労働者の送出につき、労働省による国外就労許可が必要となった。 |
2001年 | 上記内閣令№ 408の改正 | ・移民庁設立。 ・移民庁が国外就労許可権者・国外送出の実施主体となった。 |
2018年 | ・国外就労許可制度の廃止。 ・民間送出機関(要ライセンス)の移民送出が可能となった。 | |
2024年 4月4日 | ・内閣府に対外労働移民部を設置。 ・民間送出機関が移民労働者から自由に送出手数料を取れるようになる(予定)。 | |
2024年 10月17日 | ・内閣付属移民庁の設置。 ・「対外労働移住共和国委員会」を「移民共和国委員会」へと改称。 | |
・民間送出機関へ職業訓練教育および外国語教育を実施する権限の付与。 ・2024年12月までに以下を含む件に関する法律の制定: ①民間送出機関の物的・技術的基盤およびその責任者の資格に関する要件 ②民間送出機関の職員の倫理行動規範の制定 ③民間送出機関の活動の評価基準の策定およびその評価ランキングの作成 | ||
2025年 4月22日 | この内閣令により、以下の規則が制定された。 ・ウズベキスタン共和国内閣付属移民庁に関する規則(内閣令付属文書1) ・ウズベキスタン共和国国民を海外での労働活動に従事させるための組織的送出手続に関する規則(内閣令付属文書2) 等 |
2. 監督官庁
従来、雇用貧困削減省が移民分野の規制や民間送出機関の監督権限を有していたが、2024年10月17日付大統領令により、現在は移民庁が内閣府の管轄下となり、これらの権限を有している。なお、移民庁は送出機関としての機能も有するが、大統領令№PP-367により、2026年1月1日より送出機関としての機能を段階的に失う予定である。

3. 送出機関について
移民の送出しは、移民庁と民間送出機関によって行われる。2025年8月時点で民間送出機関は37社である。うち6社が日本を送出対象国としている【送出機関の一覧】。
なお、移民庁へのヒアリングによると、特定技能・技人国等の就労に係る在留資格の送出/受入については、本人と受入企業が直接契約をする場合を除いて、ライセンスを取得している送出機関を通じて行う必要がある。技能実習は制度上、送出機関の関与が必須である。
4. 送出法令の特徴について
・送出機関の設立
こちらを参照【送出機関・日本語学校の設立手続(概要)】※現時点では管轄が雇用貧困削減省から移民庁に変わった点を除いて手続に変更点はない。
・高額の預託金
2020年の法改正まで、民間送出機関はライセンスを取得するために50,000ドルを「国外労働者の権利と利益を支援・保護する基金」に預託する必要があった(民間雇用機関法第13条)。しかし、ウズベキスタン国内で、悪質な送出機関が高額な手数料(約2000~3000ドル)を求職者から受領したにもかかわらず、送出先となる企業を見つけることができずトラブルとなる事例が多発し、メディアや上院で取り扱われるほど社会問題化したため、移民労働者保護を目的として2020年に規制が強化され、基礎計算額の8,500倍(約229,000ドル)を預託すべきこととなった。
なお、2024年10月17日付新大統領令により預託金の額を減額することが示され、2025年5月頃より基礎計算額の4000倍となった。
・求職者から受領できる送出しサービス料の自由化
2020年までは送出しサービス料に関する規制はなかったが、上記経緯により規制が強化され、2020年11月から民間送出機関は求職者から送出しサービス料を受け取ることはできず(民間雇用機関法13条)、コンサルティング料として340,000スム(約4,300円※2024年6月時点)のみ受け取ることができるようになっていた(同法14条)。
【なお、移民庁に対するヒアリングによると、現在、送出手数料を自由化する方向で新たな移民送出法を制定中とのことである。】
※民間送出機関へのヒアリングによると、日本語教育費用・ビザ申請サポート料などの名目で、求職者から1000ドル~2000ドル程度受領している機関が複数存在している。
・移民庁の権限・主な任務
ウズベキスタン内閣令により設置された移民庁は、国外労働を希望する国民に対する制度的支援を担っている。主な権限および機能は以下の通りである(「ウズベキスタン共和国内閣付属移民庁に関する規則」より):
国外雇用機会の確保に向けた監督・支援
ウズベキスタン国民が国外で合法的に就労できるよう、外国人雇用主による選抜プロセスが適切に実施されることを監督する。必要に応じて、出張相談会や面談などにも移民庁職員が参加する。
初期適応支援の監督
国外での就労開始前に実施されるオリエンテーションなどの初期適応支援プログラムが確実に提供されるよう監督を行う。
データベースおよびレジストリの管理
国外で働くウズベキスタン国民に関する統一データベースの構築に参画するほか、外国人雇用主に関する登録簿(レジストリ)を管理する。
民間職業紹介機関の許認可および監督
国外就労支援を行う民間送出機関に対し、ライセンス申請の受付、審査、活動の監督、ならびにライセンスの停止・再開に関する権限を持つ。
求人枠の割当て
外国の雇用主やリクルート機関から提供された求人情報を、登録された民間送出機関に対して割り当てる業務を行う。
民間送出機関の権利および義務は「民間雇用機関に関する法律(№ ЗРУ-501)」および関連する「ウズベキスタン共和国国民を海外での労働活動に従事させるための組織的送出手続に関する規則」に明記されている。
情報取得と契約に基づくサービス提供
民間雇用機関法第16条により、民間送出機関は国家機関や行政機関から雇用関連情報を取得する権利を有する。また、求職者や雇用主から必要な書類や情報を受領することができ、すべてのサービスは契約に基づいて提供されなければならない。さらに、締結された契約は、「labor-migration」情報システムにリアルタイムで登録することが義務づけられている。
安全性・適正性の確保に関する義務
ウズベキスタン共和国国民を海外での労働活動に従事させるための組織的送出手続に関する規則に基づき様々な義務が課せられている。以下はその一例である。
不適格雇用主の排除
登録簿に記載されていない、または法令違反歴のある外国人雇用主を候補者の送り先として選定してはならない。研修の実施と修了証明の確保
求職者に対し、就労予定国の言語、慣習、法制度、安全衛生、感染症予防、過激思想対策等に関する短期研修を受講させ、修了および証明書の取得を確実に行う。保険加入の義務
補助金を活用して、送出される労働者の生命と健康を守るため、就労前に適切な保険に加入させる。条件不履行時の代替雇用手配
外国人雇用主が必要な条件を満たさない場合や就労を拒否した場合、送出機関は速やかに他の雇用先を手配する。合意条件での就労が不可能な場合の帰国措置と費用負担
求職者が合意条件での就労ができない場合、送出機関は求職者の帰国を確保する義務がある。送出機関にこの義務の不履行がある場合は移民庁が基金の資金を用いて帰国させ費用を送出機関の保証金から充当する。
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